細胞の老化と健康

人は誰しも老いるものです。
またそれに抗いたいと思うのも、人の性でしょうか。

「老化」「老い」と言う言葉には、多くの方がネガティブなイメージを抱かれることでしょう。
しかし、体の中では、この老いすら上手に活用しています。

体の中では何が起こっているのか:細胞レベルでの老化

細胞が分裂する回数には上限がある:ヘイフリック限界

細胞の老化と言いますが、さて、何を目安にすればいいのでしょう?
人間であれば、子供や若者と年寄りの違いは、何と言っても身体能力でしょう。老いてしまえば、身体能力は確実に落ちます。

とは言え、細胞は動いたりしませんので、何か他のものを目安にする必要があります。
それが、細胞分裂が可能かどうかという基準です。

ヒトは60兆個とも言われる細胞で成り立っていますが、元は一つの受精卵から始まっています。
老いを考えた場合、極端な言い方をすれば、受精卵の状態が最も若い状態で、そこから先は常に老いに向かっているとすら言えるでしょう。

細胞は、分裂することで増えてゆきますが、決して無制限に分裂することは出来ません。
分裂回数には制限があり、人間の場合、その回数は50回と考えられています。
この法則を、発見者の名前をとって、ヘイフリック限界と言います。

分裂回数の回数券:テロメア

このヘイフリック限界を制御しているのが、テロメアと呼ばれるタンパク質です。
染色体の両端についていて、分裂する毎に短くなってゆきます。
限界まで短くなると、テロメアによって隠されていた目印が現れることで、分裂が止まってしまうという仕組みになっています。

たったの50回?と思われるかもしれませんが、1回目が2、2回目で4、3回目で8と倍々に増えてゆく計算をしてみましょう。
50回分裂した時には、2の49乗は、562,949,953,421,312になります。
約563兆もあれば大量消費さえしなければ、50回も分裂できれば人間の一生分とすれば十分な様に思えます。

しかし、人間は常に細胞の大量消費をしています。
それは、血液に含まれる細胞、すなわち血球です。
この血球ですが、毎秒200万個の早さで壊されています。当然、同じレベルの毎秒200万個作り出されています。

いくら563兆個と言っても、200万/秒もの数です。
一日じゃないのです、一秒に、です。
この調子でいくと、563兆を消費するのに、8.9年しかかかりません。
実際には、血液以外の細胞がたくさんありますから、8.9年どころか1年も保つとは思えません。

序盤では盤石かに思えた分裂回数とその数も、風前の灯です。
敦盛に唄われた時代でも「人間五十年」です。今なら「人間八十年」と言うところでしょう。どう考えても50回では足りません。

それでは、どうやってこの問題を回避しているのでしょうか。

ヘイフリック限界とテロメラーゼ

この限界を超えるための仕組みが、テロメラーゼという酵素です。
細胞分裂するたびに短くなるテロメアを、テロメラーゼはせっせと修復してくれるのです。

血球に限らず、皮ふも入れ替わりが激しいので、テロメラーゼによる修復機能が高い場所です。
このおかげで、細胞の大量消費を何十年と続けても大丈夫だというわけです。

そんな便利な働きがあるのであれば、細胞はいつまでも増殖出来、いつも新しい細胞が準備されそうなものですが、そんな仕組みにはなっていません。

なぜでしょうか?

細胞の老化と健康

「老化」と「健康」という言葉は相容れないイメージがします。
死ぬまでは、いつまでも若々しくいられる方がどう考えても健康的です。
しかし、イメージとは異なり、細胞の老化も健康維持に大きな役割を果たしています。

人間は、常に同じ状態を維持しようとする働き(恒常性)によって細胞を入れ替え続けて健康を維持しています。
であれば、テロメラーゼでどんどん細胞を修復して、いつまでも元気でいられればいいのに、と思わないでもありません。

しかし、死亡原因となるがん細胞も同じ仕組みを利用することで増殖しています。
そう考えると、テロメラーゼの利用は必要最小限であるほうが、人間の健康にとっては好ましいといえます。

これが、細胞がいつかは老化してしまうと言う特徴が健康維持に果たしているだろう役割のひとつです。

分裂回数以外にも老化原因がある:細胞周期チェックポイント

分裂回数がヘイフリック限界まで達した細胞は分裂を止めて老化しますが、これ以外にも老化の原因があります。

それが、細胞周期チェックポイントと呼ばれる仕組みです。
この仕組みは、細胞分裂が正常に行われたかどうかをチェックする仕組みです。

細胞分裂に異常があると判断された場合、細胞は二つの道をたどることになります。
ひとつが、アポトーシスと呼ばれる仕組みです。
アポトーシスというのは、細胞が自らを壊す働きのことを言います。
すなわち、異常があった細胞が自ら壊れてゆくわけです。

もう一つの道が、分裂停止です。
自ら壊れることはない代わりに、分裂することを止めるのです。これがもう一つの老化です。
増えないわけですから、影響は最小限に抑えられます。

アポトーシスも分裂停止も、一度起これば二度ともとに戻ることはありません。
いわゆる、不可逆性と言う特徴を持つはたらきです。

血球のように、寿命の短い細胞であれば少々エラーが頻発しても、少し待っていれば壊れてしまいますので、影響は軽微です。
しかし、寿命の長い細胞にエラーが起きたらどうでしょうか?
エラーを起こした細胞が分裂する力を持っているならば、影響が大きくなることはお分かりいただけると思います。

分裂を停止した細胞であれば、がん細胞になる確率は減りますし、万一エラーが起きても、増えなければ影響は軽微というわけです。

もしも老化がなかったら

老化について、書いてきましたが、もしも老化という仕組みがなかったらどうでしょう?

非常にピーキーで、健康状態を維持しにくいことは間違いありません。
今私たちは、健康的な生活習慣など、予防的な行為をすることで健康を維持することが出来ます。
これは、致命的なエラーが広がる前に、細胞が老化して分裂を止めたり、アポトーシスを起こしたりするからです。

これが止まらないということは、ある日突然、致命的な病気に襲われて死ぬこととなります。
細胞レベルでいつの間にか、しかも、特に不健康なことをしたわけでもないのに異常が発生します。
当然ながら、予防などというものは無力です。

テロメラーゼが全身で活発にはたらくなど、分裂に制限が無かったとしたら健康的な細胞以外の細胞だってその恩恵を享受します。
がん細胞はその典型です。

老いずに元気に生き続けたいというのが誰もが望むことではありますが、老化という仕組みがあるからこそ、致命的な病気にかかりにくく、健康が維持出来ているというわけなのです。


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