肝臓がんとその予防

今回は、肝臓がんの話をしようと思います。

日本には、肝心要という言葉があります。最近は「心」と言う言葉を当てることが多いのですが、元々は、肝腎要という書き方をしていました。

肝臓と腎臓は人間にとって非常に大事な内蔵であることから、非常に大事なものの事を「肝腎要」という表現をしたのです。

再生する臓器「肝臓」

肝臓は、様々な臓器の中でもとりわけ珍しい特徴を持っています。
それが、再生するということです。大抵の臓器は切除するとそのままなのですが、肝臓だけは徐々に再生して元の大きさに戻ることが出来ます。

そういう意味では、肝臓がんになっても、肝臓を切ればいいだけです。
確かに、切除される方はおられますし、切除ではなくともラジオ波などで焼灼する方法も、焼灼部分は切ったも同然ですから、肝臓の治療には肝臓の再生力を利用しているものがいくつもあります。

しかし、患者さんの中にはこの様な治療が行えない方が多くおられます。
肝臓の機能が衰えてしまっているために、切除を行うと生きるのに必要な能力が得られないのです。

肝臓がんの原因

これには、肝臓がんの原因と大きな関わりがあります。
それが、慢性肝炎や肝硬変と言われる病気です。特に肝硬変を患っている肝細胞は、がん化しやすいのです。

そして、一般的な肝硬変の原因は、慢性肝炎にあります。
最初は一時的だった肝炎が、何らかの理由によって慢性化するのです。

そして、この肝炎の大きな原因のひとつがウィルスです。
B型肝炎、C型肝炎と言う言葉を聞いたことがある人も多いかと思いますが、これがウィルスを原因とする肝炎です。
ウィルス性の肝炎は、生活習慣を改善しても治療をしないかぎり治ることはありません。

生活習慣などで、悪化を少々防いで時間稼ぎは出来たとしても、いずれは肝硬変に至ります。

まずは何より感染チェック

まずは、肝炎ウィルスに感染しているかどうかをチェックすることが大切です。

肝臓がんの9割は、肝炎ウィルスによる慢性肝炎→肝硬変→肝臓がんと言う経過をたどっていると考えられています。
ウィルス感染さえ治療できれば、肝臓がんにかかる可能性は激減します。

市町村で無料で受けることが出来ますので、一生に一度は検査されることをオススメします。

以前は、感染が分かっても、確実といえるほどの治療法はありませんでしたが、現在では非常に効果の高い薬が開発されましたので、検査をする意味は非常に高いといえます。

お酒は過ぎれば毒になる

休肝日などという言葉があるように、飲酒は肝臓に大きな負担をかけることが知られています。
適度な飲酒であれば、肝臓は回復することが出来ますが、回数や量が多いと負担は馬鹿にできません。

この場合、アルコールの量を控える以外の方法はありません。
適度な量は、個人差もあって一概には言えませんが、厚生労働省では日本酒1合とか、ビール500ml程度を適量としています。
これ以上飲んでおられる方は注意が必要です。

飲み過ぎは、肝臓だけでなく、脳にも悪影響を及ぼします。
最新の研究では、飲み過ぎは「認知症を引き起こす」とも言われています。

非アルコール性肝炎

しかし、中にはアルコールを摂取していないにも関わらず、肝炎になるかたがおいでになります。
それが、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)と呼ばれる病気です。
この病気の原因は、高カロリーの食事にあると言われています。
余分なカロリーを肝臓が脂肪として蓄えてしまうのです。

これは、飲酒をしている方にもあてはまります。
お酒にはしっかりカロリーが含まれています。また、お酒のおつまみにはカロリーが高いものも少なくありません。
アルコールとカロリーのダブルパンチで肝臓にダメージとなってしまいます。

これを改善するには、肝臓に蓄積された脂肪を取り除くしかありません。
取り除くことそのものは、肝臓自身が行ってくれるのですが、肝臓以外の臓器にも脂肪は溜まります。
この溜まった脂肪を分解してもらおうということで、肝臓には分解すべき脂肪がどんどんと流れ込んでいるというのが実情です。

その為には、内臓脂肪を減らして、肝臓への脂肪供給を断つしかありません。

肝臓の健康には運動が役に立つ

これには、食事の改善もさることながら、定期的な運動が効果的であることが判っています。
というか、食事の見直しと運動、これ以上の方法はありません。

アメリカ国立がん研究所とハーバード大学の研究チームが行った調査によると、
適度な運動量とは、週におよそ150分でウォーキング程度の運動で十分で、150分の内20分程度は激しい運動が良いのだそうです。

この様な方法で、徐々にからだを改善して行くことで、肝臓の負担が減り、肝炎や肝硬変と言った病気にかかる可能性が減り、ひいては肝臓がんになりにくいと言うことになるのです。