BMIとがん

こんにちは、大石です。
今回は、肥満とがんに関する研究論文についてご紹介します。

肥満は健康的ではないと昔から言われています。
現在のように科学的根拠がなかった時代から、痛風や糖尿病は食習慣や生活習慣が問題だとして「贅沢病」と言ったような呼ばれ方をすることもありました。

このような事から、過体重・肥満とがんには関係があるのでは無いかという考えは、決して珍しいものではありませんでした。
しかし、なぜ肥満者ががんになりやすいのかという点においては、近年に至るまで仮説に過ぎなかったと言えるでしょう。

例えば、2011年にNCI(アメリカ国立がん研究所)が発行した情報誌(NCI Cancer Bulletin)には、

“2002年に国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer)は、ヨーロッパ のデータを用いて、子宮体癌と食道癌の全症例の 3 分の 1、腎癌の4分の 1 に肥満が影響していると推計した。”

“2003年 New England Journal of Medicine 誌に掲載された論文で、米国がん協会の研究者らは、男性では癌死全体の14%、女性では20%に体重過剰が影響していると推計した。”

とあります。
2003年の段階では、肥満とがんの関係はあくまでも「推計」や「推測」に過ぎず、メカニズムについての言及がなかったのです。

なぜ肥満の人はがんになりやすいのか?

その後、なぜ肥満の人ががんにかかりやすいのか?という理由についての論文が発表されるようになりました。

その内の一つが、日本の国立がん研究所によって2013年にNature誌に発表された論文です。

タイトルは、”Obesity-induced gut microbial metabolite promotes liver cancer via senescence secretome”
「肥満に伴う腸内細菌の変化が肝がんの発症を促進する。」というものです。

発表内容を簡単に説明しますと

肥満になることで、腸内細菌のバランスが変化し、1次胆汁酸(*1)が2次胆汁酸(*2)へと代謝されやすくなります。
この2次胆汁酸は、肝星細胞(*3)の老化を促します。老化した肝星細胞は炎症性のサイトカイン(*4)を分泌し、周囲の肝細胞の発がんが促進される。

という内容です。

今までは、推測に過ぎなかったものが、肥満によるがんのメカニズムに一歩近づいた論文と言えます。

もちろん、推計や推論が役に立たないというわけではありません。

例えば、2014年8月にロンドン大学の研究者によって発表された論文では、BMIの数値とがんの関連について大規模なデータ分析を行いました。
検討の対象となったのは、英国医薬品・医療製品規制庁の臨床診療研究データリンクよる 524 万例 です。

22種類のがんについて検討した結果、そのうち17種類のがんにおいて、肥満(BMIの数値上昇)が、がんのリスクを上昇させているという結果でした。

中でも、肝臓がん、結腸がん、閉経後乳がんや、子宮がん、胆嚢癌、腎臓がん、子宮頸がん、甲状腺がん、白血病については体重のコントロールでリスク管理が可能だと考えられるそうです。

ただし、BMIが低ければ低いほど良いというわけではありません。
最もリスクが高いのは「非常に痩せている人」であり、その次にリスクが高いのが「非常に太った人」と考えられています。
様々な国でBMIと健康の関係について研究されていますが、どの研究においても同様の結果となっています。
ただし、欧米諸国と日本ではBMIの分布が異なり、欧米諸国では肥満の傾向があるのに対して、日本では痩せの傾向があります。

国立がん研究センターの研究結果では、日本人においてはBMIの数値が21~29の範囲、特に23~29の範囲であれば、がんの発症リスクに大きな違いはないと考えられます。

体重と健康に関しては、「Jカーブ」と呼ばれる現象があり、理想的だとされる体重よりも若干高めの数値の方が、抵抗性が高まり、健康で長寿であることが知られています。
先ほどの国立がん研究センターの数値もBMIの範囲が若干高めとなっているのは、このような理由によるものです。

参考までに、BMIの算出方法を記載しておきます。

体重/身長^2  体重(kgにて換算)を身長(mにて換算)の二乗で割ります。

また、一般的に適正とされるBMIは22と言われ、BMI25以上からを肥満だとする考え方が主流ですが

健康長寿という観点からデータを分析した場合、BMI24~27.9の範囲が最も死亡率が低いというデータも有ります。

もちろん、適正体重であるBMI22の範囲が不健康だというわけではありませんが、ちょっとポッチャリの方がより健康的だと言うことは、世界的にみても主流な考え方です。

この様に最も好ましいのは、「健康的な体重を維持すること」であり、太り過ぎは良くないが、痩せ過ぎはもっと良くないと言えるでしょう。

(*1)1次胆汁酸:肝臓でコレステロールを原料に作られる。脂肪の消化吸収を促進する働きがある。
(*2)2次胆汁酸:1次胆汁酸が腸内細菌によって代謝されることで出来た成分。
(*3)肝星細胞:肝臓内の毛細血管をぐるりと取り巻く細胞で、ビタミンAを貯蔵したり、コラーゲン線維を作り出すことが出来ます。
(*4)サイトカイン:細胞から放出され、細胞間の情報伝達を担うタンパク質で、様々な種類がある。細胞から放出されたサイトカインは、体液を通り、細胞表面の受容体に結合して働きを現すものがよく知られている。


よくわかるフコイダン入門
0

お知らせ

  • お知らせはございません。