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膵癌発生を促進するメカニズムが発見される【NEWS】

がんはどうして、どのようにして発生するのか、このページでも幾つかの記事を書いてきました。
なにを原因とするかは別にして、最終的には遺伝子にエラーを持った細胞、がん細胞としての特徴を持つに至った細胞が増殖することで発症することとなります。

今回発表されたのは、膵臓がんの発生を促進するメカニズムを見つけたというものです。
しかも、細胞実験ではなく、マウスという生きた動物を使っての実験です。

この発見は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(略称:AMED)と東京大学の研究者によるものです。

今まで意味がないと思われていた遺伝子が関係していた

遺伝子の話は意味を混同しやすいので、わからなくなったときには以前の記事を参照いただくといいかもしれません。

さて、遺伝子というのは、人体の設計図といえますが、生きていくために必要な様々な部品(タンパク質)の設計図でもあります。
今回のテーマで扱われている遺伝子というのは、タンパク質を作るために複製されたRNAを指しています。

遺伝子というのは、膨大な設計情報を保存した図書館に例えることが出来ます。
とうぜん、その中には膨大な書籍があるわけですが、すごく大事な事が書いてある本もあれば、なんだか良くわからない本もあります。
ヒトは、その活動を行うために、設計情報をRNAという形でコピーして、色んな所でタンパク質の部品を作って利用しています。

ただ、中にはなんだか良くわからない、意味がなさそうな部分をRNAとしてコピーしてしまうこともあります。
タンパク質の設計図として利用することが出来ない(ゆえに、意味がないと考えられている)うえ、同じ内容が繰り返し記録されているRNAが今回関係してきます。
このような、意味のなさそうなRNAのことを「反復配列RNA」といいます。

実験に使われた「反復配列RNA」を過剰に作り出させる操作をしたマウスは、細胞の遺伝子にダメージを受け、それが蓄積してゆくことで、がんの発生を促進していることが確認されたのです。

反復配列RNAは何をしているのか?

設計図として使えない、一見意味のない「反復配列RNA」ですが、一体何をやらかしているのでしょう。
ヒトは60兆個ともいわれる膨大な数の細胞を持っていますので、色んな所で障害が発生しています。
このダメージを修復するための部品に、「YBX1」というものがあるのですが、「反復配列RNA」はこの「YBX1」に取り付いて修復の邪魔をするのです。

この結果、修復されるはずだったダメージが修復されず、新たなダメージは蓄積するという悪循環が発生し、膵臓がんの発生を促進しているわけです。

これからの展望

一番わかり易いのは、血液中の「反復配列RNA」を検出することで膵臓がんの早期発見をすることができるというものでしょう。
発生の仕組みがもっと解明されれば、予防にも治療にも使えるようになるかもしれません。

参考文献

反復配列RNAの異常発現が膵癌発生を促進するメカニズムをマウスで確認(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)
https://www.amed.go.jp/news/release_20180510.html