がんの様々な治療ー放射線
以前もお伝えしましたが、がん治療には三大療法と呼ばれる治療方法が存在します。
「手術」「放射線」「抗がん剤」の内、手術についで挙げられるのが放射線治療です。
手術の次に挙げられるのは、放射線治療が手術と同様に局所的な、「がんのみを対象とした」治療だからでしょう。
三大療法のひとつである抗がん剤治療の場合は、手術や放射線とは異なり、基本的にはがんとは全く関係のない「全身」に影響を及ぼしてしまいます。
放射線治療のメカニズム
放射線がからだに良くない、危険なものと言うイメージは、日本に生まれ住んだ人であれば共通して持っていると思います。
古くは、第2次世界大戦での広島や長崎、新しくは大震災での福島の原子力発電所での災害などが多くの人の心に深い印象を残していると思います。
この放射線、なぜ「良くない」のか「危険」なのか、この理由が放射線治療が効果を表すメカニズムでもあります。
治療で使われる放射線と言うのは、わかりやすく言うと電波の様なものと言えます。
この放射線は、からだの中を通り抜けることが出来るほど「透過性が高く」、「エネルギーの量が多い」と言う特徴があります。
透過性が高く、エネルギーの量が多いということは、からだを通り抜ける時に、細胞に影響を及ぼしながら通過すると言うことを意味します。
特に、遺伝子(DNA)に対する影響が無視できないものと言えます。
DNAは、人体の設計図とも言える大事な部品で全ての細胞に備わっていますが、これが壊れてしまうと、細胞は生きてはいけなくなります。
放射線は、このDNAを壊してしまう働きを持っているのです。
これが「良くない」「危険」と言われる理由なのです。
こんな放射線を治療に使う事ができるのは、放射線の照射をコントロールすることが出来るからに他なりません。
人間の細胞は正常であれば少々の放射線ではへこたれない、したたかな強さを持っています。
一度に大量の放射線を浴びてしまったり、継続して浴び続けたりしないのであれば、少々壊されてもDNAを修復することが出来ます。
がん細胞もDNAを修復しようとしますが、健康な細胞とは異なり上手く修理ができずモタモタしてしまいますので、健康な細胞が回復したタイミングを見て、もう一度照射します。
このように、健康な細胞とがん細胞の修復力の違いを使って行うのが放射線治療です。
放射線治療の特徴
さて、この様なメカニズムを持つ放射線治療ですが、どのような特徴があるのでしょうか。
長所:
・手術や抗がん剤よりも低いからだへの負担。
・手術ができない場所や人でもできる可能性がある。
・ほとんどは通院で行える。
・目的によって使い分けが出来る。
短所:
・狙った場所の周囲にも放射線が照射されてしまうため、治療に適さない場所がある。
・場所によっては放射線が通りにくく治療に適さない場所がある。
・一度治療を行った場所には二度と照射できない。
この様な長所と短所があります。
何よりも大きな特徴は、からだへの負担の低さです。
抗がん剤や手術では入院治療をすることが多くなりますが、放射線治療の場合には、普段通りの生活を行いながら、病院に通院することが出来る点が大きな利点です。
いくつかの短所がある放射線治療ですが、これらを克服するためにいくつもの治療法が開発されています。
次回では、これらの治療方法について解説していきたいと思います。