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働きながら治療をすると言う選択(がんと仕事)

がん患者と仕事の関係が注目されだした社会背景

「がん」になると様々な不安が出てきますが、その中のひとつが「仕事」です。
大きな不安でもあり、大事な問題でもある仕事ですが、注目され始めたのはつい最近のことです。

なぜ最近までは注目されなかったのでしょうか。

がんというのは高齢者の病気という側面があります。
国立がん研究センターが発表しているデータを見ても、男性は60歳を超えるあたりから女性は70歳あたりから急激にがんによる死亡者数が増えていくのがわかるかと思います。

男性死亡率女性死亡率

国立がん研究センターがん対策情報センター資料より

60歳といえばまだまだ現役で働いている方々が大半ですが、昔はそうではありませんでした。
今では、希望者は65歳まで雇用することが義務化されましたが、それまでは60歳定年が一般的でしたし、1994年までは55歳で定年退職する方が沢山おられました。
このように、現役でいる期間がどんどんと長くなってきたのです。

これにともなって政府は年金の受給年齢を引き上げるなど、高齢者に対する公的な扱いを変えてきています。
それだけでなく、人々の意識もずいぶんと変わってきました。
2016年に40代以降を対象に行われた厚生労働省の調査によると、60歳を高齢者と考える人は全体の9.8%に過ぎません。
殆どの方は60歳はまだまだ若い現役世代だと考えていることがわかります。

「高齢化」「定年年齢の引き上げ」「人々の意識の変化」、この様な社会背景によって、公的にも私的にも高齢者の意味が変化して来ました。

そして、これまで引退後の病気であったがんが、現役時代にかかる病気に変わってきたのです。

がんと仕事

それでは、実際に仕事をしながら治療をしている人はどの位いるのでしょうか?

少々古い数字なのですが、平成22年の国民生活基礎調査によると仕事をしながらがんで通院している人の数は32.5万人と言われています。*

2010年における日本の就業者数は、およそ5,961万人と発表されていますので、働いている人の200人に1人ががん治療を行いながら仕事をしている計算です。

しかし、現実はもっと厳しいのではないかと考えられます。

国立がん研究センターによると

 私たちの研究班が実施したアンケート調査(回答者平均44歳、診断後約4年経過)では、がん診断時に仕事を持っていた方の約4分の1が退職し、半数近くの方の個人所得が減少していました。

自由記述欄には、「職場の誰にどこまで病気を伝えるか迷う」「病気を伝えたら自主退職を勧められた」「体調不良を職務怠慢と見なされてしまう」「責任ある仕事を任されず、やりがいを感じない」「頻回の通院で肩身が狭い」など多くの声が寄せられました。また、体調が悪くても家計や医療費のために無理に働き続ける方や、いったん退職して再就職を目指す場合にがん治療歴を就職先に告げるべきか思い悩む方もいました。

一方、治療が一段落して病状がある程度安定すると、働く力が回復してくることが多いのも、がんの特色です。中には「会社や同僚に迷惑を掛けたくない」と考えて診断直後に退職を決めてしまう方もおられますが、退職によって労働者のさまざまな権利を失ってしまいます。少し時間の余裕をもって働き方を考えていただきたいと思います。

もし周囲にがん治療と仕事の両立に悩む知り合いの方がいたら、「早まって仕事を辞めないで」「工夫の余地がきっとある」と声を掛けてあげてください。
がん情報サービス「がんと共に働く」より引用

仕事をしながら治療するのではなく、退職してしまう方が多くおられるという現実があるのです。

がん患者を取り巻く環境とその変化

これまでに書いたように、がんが老化現象のひとつであると言う側面、高齢化とそれにともなう現役期間の長期化が、がんと人々の関わり方を変えてきました。

もっと正確に言うと、変えなければいけないけれども、意識が追いついていないのです。

そこには様々な理由があります。

年齢に関わりなく発症する病気であれば、様々な世代が体験し、その体験を元に社会全体の意識も形成されることでしょう。

しかし、60歳以降の世代が中心となる病気であるがために、これまでの蓄積やモデルケースが無いのです。

患者やその家族だけの問題であれば、患者会や病院の先生方などで対応することが出来るかもしれませんが、仕事は、一人でする事はできません。必ず誰かと一緒に関わってゆく必要があります。

隣の同僚ががん患者である、部下が、上司ががん患者である、そういう体験が社会に蓄積されていません。

このため、周囲の方はどの様に対応していけば良いのかわからないのです。

がんが本当に不治の病であり、病床で最後を迎える、そんな病気であったならば話もう少し異なると思うのですがそうではありません。

国立がん研究センターから2016年に発表された、全がん10年生存率は58%を超えます。

敢えて全ての平均値を使わせてもらいましたが、がんと診断されて10年間も元気にしている方が58%もいるのです。

それだけではありません。入院期間もどんどん短くなってきています。

昔は手術といえば開腹するなど、患者に大きな負担をかけるものでした。

このため、治療中に仕事をすると言うのは、中々出来ることではありませんでした。

抗がん剤治療にしても入院して点滴をする方法が一般的でしたので、点滴のためだけに何日も入院される方がほとんどでした。

それが今ではファイバースコープを見ながら腫瘍部分だけを切除したり、切除の方法にしてもレーザーで腫瘍部分だけを焼き切ったりするなど、負担が少ない治療法が導入されています。

からだに小さな穴を開けて器具を差し込んで治療する、腹腔鏡治療も増えてきました。

お薬にしても、入院ではなく通院で行える点滴方法が開発されただけでなく、錠剤やカプセルといった経口投与の抗がん剤も多く使われるようになりました。

この様な背景もあり、たとえがん治療であっても2週間以上入院することは非常に少なくなったのです。

たとえ治療中であっても、病気でない人と変わらない社会参加が可能になってきているのです。

60歳以降の世代が現役の労働者として働く時代はまだ始まったばかりです。

国は、年金の受給年齢を65歳に引き上げています。今後70歳に引き上げられるのではないかと言われてもいます。

今よりももっと多くの方々が、現役世代としてがんと関わって行かなければならないのです。

これからのこと

今まで現状をお伝えしてきましたが、まだまだ始まったばかりのことで、この文章を書いている私もどのようにしたら良いか、適切なアドバイスを差し上げることは出来ません。

しかし、いくつかのことは言えます。

一つ目は、出来れば会社を辞めずに済むように、誰かに相談して欲しいということです。

もう一つは、周囲の方は冷静に判断してほしいということです。

引用したがんセンターの文章に、肩身が狭いなどの言葉がありました。

治療中に、健康な人と同じ働き方をするのは誰もができることではありません。

しかし、よくよく考えてみると、あなたと同じだけの蓄積をもった誰かをすぐに雇うことなど出来るはずはありません。

みんなと同じ働き方が出来ないだけで、持っている知識や経験は色褪せるものでもありません。

また、今健康というだけで誰もが勘違いをしていますが、明日も元気でいることを保証できる人材など存在しません。

治療中は治療を優先した人材配置を行い、治療後はまた復帰すると言う方法で問題ないはずなのです。

これには、患者側がしっかり相談する事が欠かせません。

治療の方向性とこれからの目標など、しっかり分かっていれば、適した場所に配置することが可能です。

逆に、申し訳ないと曖昧にごまかしていれば、配置する方はどうしていいか分からなくなります。

今はまだ例が少ないかも知れません。

しかし、今まで書いてきたように、隣の同僚が、上司が、部下ががん患者であることは何も珍しくない時代がやってきます。

そんな時に、「退職する」「退職させる」そんな選択は会社に、仕事にとっても大きな損失となります。

これから日本の人口は減少していきます。もちろん、労働人口も減ってきます。

人手不足の時代に、知識やスキルを持った人材を病気というだけで放出する様な方針で、果たして生き残っていけるものでしょうか?

情に訴えているわけではありません。ビジネスとしてその判断は適当でしょうか?

今、一緒に働く選択をしないということは、なんら蓄積をせず、いよいよになって始めることを意味します。

準備もしないまま本番に突入するビジネスが果たして上手く行くものでしょうか。

がん患者の社会参加を後押しするということは、がん患者にとってもその周りの者にとってもWin-Winの関係となることは間違いないと思うのです。

注記

*少々古い数値ではありますが、厚生労働省によって2016年2月に発表された事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドラインの中に登場することから、国が発表した数値の中では最も新しい数値だと考えられます。


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