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免疫療法の効果をより的確に判断する方法の開発が進む

最近最も注目を集めているがん治療のひとつに、免疫療法が挙げられます。

今までになかったメカニズムであることから期待を集めている反面、非常に高価であることから批判も含めた注目を浴びていることも理由です。
免疫療法はまだまだ新しい薬ですので、治療の成果を評価する方法も模索段階と言えます。

画像診断による評価

これは、いわゆるX線やMRI、CTといった画像を撮影し、治療の前後を比べることで治療成果を評価する方法です。
何も珍しい方法ではないのですが、この方法には課題があります。
一番大きな課題は、画像を診断する技術者のスキルに左右されるという点です。

免疫療法の薬は非常に高価ですから、できるだけ早く評価をしたいところですが、治療から検査までの期間が短いほど「変化に乏しく」判断が困難になります。

この課題を解決するために、ケース・ウェスタン・リザーブ大学のAnant Madabhushi氏らの研究チームは、AIを用いて「がん細胞の組織の変化」を捉えることで、免疫療法の効果を確かめる技術を開発しました。 (*1)
AIを使うことで、凄腕の技術者でなくとも、正確で早い診断が可能になるのです。
彼らが開発した手法を使うことで、2~3サイクル後の治療結果から正確に免疫療法の適否を判定することができたとのことです。

例えば、オプジーボは14日を1サイクルとしますから、およそ1ヶ月半後には、効果を表しているかどうかが判ることになります。

がんは進行性の病気ですから、少しでも早く見極めがつくことは非常に良いことと言えます。

また、この手法は薬剤の種類を問わないのも嬉しい点です。

血液検査によるバイオマーカーでの免疫細胞の評価

京都大学が開発したのが、免疫細胞の評価をすることで、免疫チェックポイント阻害剤の効果を確かめると言う方法です。(*2)

バイオマーカーによる治療評価もまた、画像診断同様に珍しいものではありません。
皆さんに馴染みの深いものにはがんマーカー、腫瘍マーカーという言葉があるかと思います。

腫瘍マーカーによる評価とその弱点

免疫チェックポイント阻害薬は腫瘍マーカーでも評価できないわけではありません。
しかしながら、腫瘍マーカーには大きな弱点があります。
それは、マーカーとして使われる物質は、がんに特化した物質ではないという点です。
風邪気味と言うだけで腫瘍マーカーが跳ね上がっても何も不思議ではありません。
また、治療の成果を判断するにはやはり、それなりの技が要ると言えます。

免疫細胞の評価と言う手法

免疫治療剤という薬は、免疫細胞に何らかの影響を与えることで治療効果を生み出します。
免疫チェックポイント阻害薬は、T細胞の活動を後押しすることで効果を発揮しますので、T細胞の状態を判別できれば良い指標になるのです。

記事中では、T細胞の活性度に関する四つの指標を組み合わせて分析したところ、9割以上の患者さんで有効な判定ができたとのこと。

この手法の良い点は、治療効果を表す要素を直接チェックできるという点にあります。
T細胞が活性化しているかどうかをどれだけ効果的に判別できるかという点さえクリアできればしめたものです。

がん治療と聞くと、新しい治療方法や、より効果的な治療法に注目したくなるのが人の性ではあります。

しかし、既存の治療法の周辺技術を開発することによる、より効果的な使い方というのは決して新薬や新治療に劣るものではありません。

新しい治療法だけでなく、周辺技術の開発もまた待ち望まれているのです。

 

参考文献

(*1)AIを使って「がん免疫療法が効く人と効かない人」を判別することが可能に(GIGAZINE)
https://gigazine.net/news/20191125-ai-immunotherapy-lung-cancer/

(*2)血液検査で有効性判定 がん免疫療法―京大(JIJI.com)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020013001581&g=soc

京都大学 プレスリリース
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2019/200130_1.html

上記プレスリリースの論文
Combination of host immune metabolic biomarkers for the PD-1 blockade cancer immunotherapy

Ryusuke Hatae,1 Kenji Chamoto,1 Young Hak Kim,2 Kazuhiro Sonomura,3,4 Kei Taneishi,5,6 Shuji Kawaguchi,3 Hironori Yoshida,2 Hiroaki Ozasa,2 Yuichi Sakamori,2 Maryam Akrami,1 Sidonia Fagarasan,7 Izuru Masuda,8 Yasushi Okuno,5 Fumihiko Matsuda,3 Toyohiro Hirai,2 and Tasuku Honjo1
https://insight.jci.org/articles/view/133501