コーヒーはがんに良い?

世の中には様々な飲み物がありますが、中でも「コーヒー」「紅茶」「お茶」「牛乳」といった飲み物は、広く受け入れられているだけでなく、健康に関する情報やうわさも沢山あります。

今回はその中でもコーヒーに注目してみたいと思います。

どのような食材であっても、良いとする意見もあれば、悪いとする意見もあるものです。
そこで、インターネットを駆使してどのような意見が主流なのかを調べてみることにしました。

「コーヒー がん」と検索した結果、ページ総数*が約1,690万件あり、その内Googleが表示したのは330件でした。
まずは、がんセンターに併設されたコーヒーショップ、がん関連の書籍販売ページなど、全く関係ないページを除外しました。

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まずは「コーヒーとがん」について作者によって何らかの情報が書かれているページだけに絞り込んだのです。
全体的に見ると、肯定的な意見が圧倒的に多く211件は肯定的な意見を書いたページでした。

75%のページが肯定していると言う結果になりましたが、全部を見ていく中で、根拠も示さずに良い、悪いと書いているページがかなりありました。また、専門家ではない方々の意見には「よくわからない」と言うものもありました。
そこで、つぎに根拠を示して書いているページだけに絞り込むことにしました。

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更にこの222件をチェックして、最も信頼度が高い情報に絞り込んでいくと最終的に12のページが残ることとなりました。

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これらのページの最大の特徴は、発表された研究に直接携わった人が書いたり喋ったりした情報がそのまま載せられていることです。また、書かれている情報に関する責任の所在がハッキリしています。
否定的な意見やがんとは関係ないと言うを研究発表していた国立がん研究センターは最新の資料では、肯定的な意見に集約されていますし、WHOによる最新の発表においては、病名によって肯定的、無関係と併記されていますけれど、悪影響があると言う意見は撤回されています。
過去のものとは言え、検索することで実際にページを読むことが出来るため、グラフでは過去の主張も反映しました。

さて、これら12のページを詳細に読むと、情報源は下の情報に集約されていました。

1.国立がん研究センターの研究結果
2.WHOによるコーヒー飲用とがんリスク
3.愛知県立がんセンターの先生による資料
4.東北大学による研究結果
5.JACCによる研究結果
6.ダナファーバー癌研究所の論文
(順不同)

日本国内で、日本語を使って検索をしていますので、日本の情報が中心となっています。世界の情報はどうなっているか、気になるところもありますが、この結果は良いことでもあります。
がんの発症には人種による差があると考えられており、論文によっては、「アメリカに住むアフリカ系の人種による乳がんのリスクについて」などと言うものもあるくらいです。
出来るだけ、日本での研究を中心にして考えたほうが良いというわけです。

それでは、上の内容を1から順に紹介させていただきましょう。
国立がん研究センターの記事でもっとも分かりやすいと思われるページが、以下のページです
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/skillup/15/111700008/040100041/?ST=print

日本におけるがん研究の総本山とも言えるのが、国立がん研究センターです。
日本経済新聞社が、国立がん研究センター/社会と健康研究センター/予防研究部部長 笹月静さんにインタビューをしたものです。
ここには、2016年10月現在での国立がん研究センターにおけるコーヒーとがんに対する考え方が書かれています。

国立がん研究センターによると、コーヒーは「肝臓がん」のリスクをほぼ確実に下げ、子宮内膜がん(子宮体がん)のリスクをおそらく下げると考えています。
少し前までは、大腸がんもリスクが下がるのではないかと考えていたのだそうですが、新しい発表で評価を一段階下げて「証拠不十分」というランクにしたとのことでした。
膀胱がんについてもリスクがあるかもしれないと考えられていましたが、証拠不十分で表には記載されていないようです。

次に信頼度が高いのは、WHO(国際保健機関)では無いかと思います。
WHOには、IARC(国際がん研究機関)と呼ばれる専門機関があります。IARCは1965年にWHOの外部機関として発足しました。現在では日本を含む17の国が参加していることから、WHOによる指標は世界中で使われています。

WHOによる、コーヒーに対する考え方として最も分かりやすいページが以下のページです。
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/coffee.html

WHOによる発表を、日本の農林水産省が下のように分かりやすくまとめています。

1. 膵臓、乳、前立腺に対する発がん作用はなかったこと
2. 肝臓や子宮内膜がんの発がんリスクが低下したこと
3. 他の20種類以上のがんについては、結論を出すのに十分な情報がなかったこと
以上の点から、コーヒーをグループ3(ヒトに対する発がん性について分類できない)に分類したこと
なお、上記の結論について、コーヒーの種類やいれ方による差があるかどうかは不明なこと

WHOの発表の原文は英語で、更に有料です。農林水産省の発表は分かりやすくまとめられており、誰でも読めますのでお勧めです。

次は愛知県がんセンター研究所の先生が書かれた記事です
http://www.aichi-kenko.or.jp/yoboudayori17.pdf

日本には国立がん研究センター以外にも、幾つもの研究施設があります。全国各地にある、がんセンターでも独自に研究をしているのですが、そのうちのひとつが愛知県がんセンター研究所です。
国立がん研究センターとは別に、独自に大腸がんや肝臓がんの研究発表をしているのですが、コーヒーを飲むことで、大腸がん、肝臓がんを始め複数のがん予防に役立つと考えておられます。

次は、東北大学による研究結果です
http://www.pbhealth.med.tohoku.ac.jp/node/317

東北大学では、口腔、咽頭、食道がんについての研究をおこない、コーヒーに予防的な効果があることを発表しています。

東北大学は地域住民の健康を増進するために地道な研究を続けてきたことで知られています。その成果の一つがこの発表です。
東北地方は寿命が短い地域なのですが、これを憂いた先生方が努力をしてこられたのです。この成果がようやく陽の目を浴びる様になってきて、民間企業や国と共同でプロジェクトが計画されているほどです。

次はJACCによる研究発表ページをご紹介しましょう
http://publichealth.med.hokudai.ac.jp/jacc/reports/kurozawa2/index.html

JACCと言うのは、国内の複数の学術機関や施設が共同で立ち上げた研究機関です。目的には、「日本人の生活習慣とがんの関連を明らかにすること」と書かれています。
やはり独自の研究を行って、コーヒーを飲むことで肝臓がんでの死亡率が下がることを発表しています。

最後が、外国で発表された学術研究論文の翻訳ページです
https://www.cancerit.jp/35394.html

アメリカのダナファーバ癌研究所によると、大腸がんにかかった方がコーヒーを飲むことで、治療後の再発率や死亡率が低下したというものです。

今回ご紹介させていただいたページのほとんどは「予防的」な観点から書かれたものとなっています。
コーヒーには、がん治療や日常生活の後押しをする力はありますが、単独で治療に使えるようなものでは無いからです。

ただし、今回ご紹介した中では、肝臓がんと大腸がんにおいては少々異なっています。
肝臓がんについては、コーヒーががんを治すわけではありませんが、肝硬変の症状や進行を抑えてくれると考えられています。
他の病気と異なり、肝臓がんは原因がわかっている数少ないがんのひとつです。
肝臓がんは、ウィルスに感染し、慢性肝炎を発症し、慢性肝炎が肝硬変に悪化し、やがてがん細胞に悪化します。
慢性肝炎や肝硬変の状態を改善したり進行を抑えたりすることは、既にがんを患った方にも有効です。
大腸がんにおいては、ダナファーバー癌研究所の発表では再発率が42%下がるとありますので、これもまた患われた方においても有効な手段だと考えられます。

コーヒーの飲用量について

いくつもの研究結果をみてきましたが、それではどの程度飲むと良いのでしょうか?

基本的には、多く飲むほどよい結果が出るのではないかと考えられていますが、どのようなものであっても飲み過ぎや食べ過ぎがからだに悪いというのは疑う余地もありません。
例えがんに良い影響を与えたとしても、他の病気にかかってしまったのでは意味がありません。

また、お薬などと異なり、△杯以上飲まなければ意味がないということもありません。

このため、ご紹介したページにおける最大量「1日5杯」を超えないようにして、飲める範囲で飲むと言うのが良いのでは無いかと思います。

コーヒーが良い理由

国立がん研究センター、愛知県がんセンター研究所は、カフェインやクロロゲン酸が炎症を軽くしたり体内の酸化を防ぐことで良い結果をもたらしていると推測しています。また、ダナファーバーがん研究所では、カフェインが好影響を及ぼしていると考えているようですが、その他のページには記載がありませんでした。

今回参考にした、ページは全て多くの方々を追跡調査したものです。専門用語でコホート研究と呼びます。
この研究は、コーヒーを飲むことでがんの発症率が低い、再発率が低いという事実を明らかにすることはできるのですが、どの成分が好影響を及ぼしているかを調査するには不向きです。
コーヒーの何が良いのか?という研究には少々不向きだとは言え、日常の習慣について調査するのにこれ以上最適な調査方法はありませんので、世界中で採用されているというわけです。

まとめ

今回調査した資料では、コーヒーががんに対して良い影響をおよぼすと言う意見が大半を締めていました。
中には、否定的な意見も散見されましたが、しっかりした根拠を持つページに絞り込んでいくにつれて、否定的な意見は影をひそめて行くことになりました。
最後まで残っていた、膀胱がんに対するリスクですが、この研究を発表した国立がん研究センターによるの最新(2016年)の表では修正されていました。

最終的には肝臓がん、子宮体がん、口腔がん、咽頭がん、食道がん、大腸がんに対して良い影響があることが示唆されたことになります。

コーヒーを飲むことで、治療に良い影響をおよぼすだろうと推察されるのは「肝臓がん」と「大腸がん」のみでしたが、その他のがんにおいても予防的な効果は、治療後の再発防止にも有効だと考えられますし、少しでもリスクが少ない生活をすることは、治療にも良い影響をもたらしてくれるのではないでしょうか。