フコイダンとエビ

皆さんエビはお好きでしょうか?芝エビなんかは天然モノしかありませんが、クルマエビなどは養殖が盛んに行われています。

これにはいくつか理由が考えられますが、ひとつはクルマエビが大変美味しいことから需要が高いことにあります。
もう一つは、長年の積み重ねによるものでしょうか、養殖と天然の差が殆どないと評価されていることも挙げられるでしょう。

今回は、そんなエビの養殖とフコイダンの関係についての話です。養殖が盛んなクルマエビですが、養殖とは言え国産が中心のクルマエビは少々値が張ります。

それに比べ、ウシエビ(ブラックタイガーエビ)やバナメイエビは東南アジアを中心に養殖業が盛んで、安価に手に入れることができます。
世界規模で言うと、養殖量はバナメイエビがトップで、その次がウシエビと言う順になります。

エビ養殖とウィルス

2012年に発表された論文は、ウシエビにフコイダンを食べさせることで免疫力を高めて病気にかかりにくくするというものでした。1)

家畜を始め、動植物を一定の範囲でたくさん育てる産業が頭を悩ませている問題は何と言っても「病気」です。

養殖というのは狭い場所で沢山育てることが求められます。そうなると、病気にかかりやすくなってしまうのです。
また、同じ種類の生物が一箇所に集められているということは、ひとたび病気が流行りだすと中々止めることが出来ません。

新聞やTVで、狂牛病や鳥インフルエンザが流行したため大量の家畜を処分したと報道されることがあります。
これは、病原菌が更に拡大することを防ぐために泣く泣く殺さざるを得ないというわけです。

抗生物質と耐性菌

このような事態を打開するための方法のひとつに抗生物質があります。
抗生物質を使用することで病気を治すことが出来ますが、良いことばかりではありません。
それが耐性菌の問題です。
抗生物質は、病原菌の弱点を突いて攻撃する薬ですが、使い続けると効かなくなって来るのです。

抗生物質の仕組みは、病原菌を構成する構造に抗生物質が結合し、本来の仕組みを失わせるというものです。
仕組みが狂った病原菌は増えられなくなるわけです。

ところが病原菌もしたたかで、抗生物質が結合できない様に突然変異を起こして生存する場合があります。
また、一見おなじ様に見えて幾つもの種類がありますので、投与された抗生物質が効かない種類のものが生き残って増えることがあります。
これが耐性のおおよその仕組みです。

そんな薬の効かない病原菌が世界中に広がってしまったら大変ですから、良い方法は無いものかと研究が続けられているわけです。

その解決策のひとつが、フコイダンを使った免疫細胞の活性化だったというわけです。

翌2013年には、バナメイエビにフコイダンを食べさせることで免疫力を高めるという論文が発表されました。2)
2016年には更に2本の論文が発表されています。3)4)

食卓にのぼるエビとフコイダンに関係があったなんて、意外ですね。

1) The effect of fucoidan from brown seaweed Sargassum wightii on WSSV resistance and immune activity in shrimp Penaeus monodon (Fab).
Immanuel G, Sivagnanavelmurugan M, Marudhupandi T, Radhakrishnan S, Palavesam A.
Fish Shellfish Immunol. 2012 Apr;32(4):551-64. doi: 10.1016/j.fsi.2012.01.003.
2) Fucoidan effectively provokes the innate immunity of white shrimp Litopenaeus vannamei and its resistance against experimental Vibrio alginolyticus infection.
Kitikiew S, Chen JC, Putra DF, Lin YC, Yeh ST, Liou CH.
Fish Shellfish Immunol. 2013 Jan;34(1):280-90. doi: 10.1016/j.fsi.2012.11.016. Erratum in: Fish Shellfish Immunol. 2013 Mar;34(3):951.
3) Lipopolysaccharide and β-1,3-glucan-binding protein (LGBP) bind to seaweed polysaccharides and activate the prophenoloxidase system in white shrimp Litopenaeus vannamei.
Chen YY, Chen JC, Kuo YH, Lin YC, Chang YH, Gong HY, Huang CL.
Dev Comp Immunol. 2016 Feb;55:144-51. doi: 10.1016/j.dci.2015.10.023.
4) White shrimp Litopenaeus vannamei that have received fucoidan exhibit a defense against Vibrio alginolyticus and WSSV despite their recovery of immune parameters to background levels.
Chen YY, Kitikiew S, Yeh ST, Chen JC.
Fish Shellfish Immunol. 2016 Dec;59:414-426. doi: 10.1016/j.fsi.2016.10.050.